「奥歯が痛くて歯医者に行ったのに、レントゲンを撮っても虫歯も歯周病も見当たらないと言われた」。こんな経験をした方は、その痛みの原因が、無意識のうちに行っている「歯ぎしり」や「食いしばり」にあるかもしれません。これらは「ブラキシズム」と総称され、特定の歯に過剰な負担をかけ続けることで、噛んだ時の痛みを引き起こす大きな原因となります。私たちが食事の際に歯にかける力は、体重と同程度と言われていますが、睡眠中の歯ぎしりや、日中に集中している時の食いしばりでは、その数倍から十倍もの力が、長時間にわたって歯にかかり続けていることが分かっています。特に奥歯は、噛みしめる力の中心となるため、その負担は甚大です。この異常な力が特定の奥歯に集中すると、歯そのものには問題がなくても、歯と骨をつなぐクッションの役割を果たしている「歯根膜」が、その負担に耐えきれずに炎症を起こしてしまいます。これが「咬合性外傷(こうごうせいがいしょう)」と呼ばれる状態で、噛んだ時にズキンとした痛みや、歯が浮いたような違和感として感じられます。朝起きた時に、顎がだるかったり、奥歯に痛みを感じたりする場合は、夜間の歯ぎしりが原因である可能性が高いでしょう。また、歯ぎしりや食いしばりは、歯そのものにもダメージを与えます。健康な歯であっても、過剰な力によって表面に微細なひび(マイクロクラック)が入ったり、歯がすり減って象牙質が露出し、しみやすくなったりします。さらに深刻なのは、歯の根が割れてしまう「歯根破折」です。特に、神経を抜いた歯はもろくなっているため、このリスクが格段に高まります。歯根破折は、噛んだ時の鈍い痛みが特徴で、多くの場合、抜歯が必要となるため、何としても避けたいトラブルです。歯ぎしりや食いしばりは、ストレスや噛み合わせ、生活習慣など、様々な要因が絡み合って起こるため、完全になくすことは困難です。しかし、歯科医院で自分専用のマウスピース(ナイトガード)を作成し、就寝中に装着することで、歯にかかる力を大幅に分散・軽減させることができます。
歯ぎしりや食いしばりが奥歯の痛みを引き起こす