大人の間で感染が広がっている百日咳。その最も確実な予防法は、言うまでもなく「ワクチン接種」です。しかし、「子供の頃に受けたはずなのに、また受けられるの?」「どこで、どんなワクチンを打てばいいの?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。結論から言うと、大人が百日咳の免疫を再度獲得するために、ワクチンを追加で接種することは可能であり、特に特定の条件下にある人々には、強く推奨されています。子供の頃に受けた百日咳ワクチンの効果は、残念ながら永続的ではなく、5年から10年で徐々に減衰してしまいます。そのため、現在の多くの大人は、百日咳菌に対する十分な免疫を持っていない状態です。この失われた免疫を補うために、大人が任意で受けることができるのが、「三種混合ワクチン(DPTまたはTdap)」です。DPTはジフテリア・百日咳・破傷風、Tdapは沈降精製百日咳ジフテリア破傷風混合ワクチンで、基本的な内容は同じです。日本では、現在、大人が接種できる百日咳単独のワクチンは承認されておらず、必ずジフテリアと破傷風のワクチンと混合された形で接種することになります。このワクチンは、定期接種ではなく「任意接種」となるため、費用は全額自己負担となります。費用は医療機関によって異なりますが、おおよそ5,000円から10,000円程度が目安です。では、特にどのような大人が、この追加接種を検討すべきなのでしょうか。最も強く推奨されるのが、「妊娠を希望している女性」と「乳幼児の家族や周囲の大人」です。生後6ヶ月未満の赤ちゃんは、百日咳にかかると重症化し、命に関わる危険性があります。赤ちゃんを百日咳から守るための最も効果的な戦略は、周りの大人が感染源にならないように、事前にワクチンを接種しておく「コクーン(繭)ストラテジー」です。お父さん、お母さんだけでなく、おじいちゃん、おばあちゃんも、孫が生まれる前に接種を検討するのが理想です。また、「保育士」や「学校の教員」、「医療従事者」など、日常的に多くの子供と接する職業の方も、感染拡大を防ぐという社会的な観点から、接種が推奨されます。ワクチン接種は、内科や小児科、トラベルクリニックなどで受けることができます。まずは、かかりつけ医に相談し、ワクチンの取り扱いの有無や、接種のスケジュールについて尋ねてみてください。