虫歯治療で、銀歯やセラミックの詰め物・被せ物を入れた後、数日間は多少の違和感があるのは普通です。しかし、いつまで経っても「その歯で噛むと、他の歯よりも先に当たって痛い」「食事のたびに違和感がある」といった症状が続く場合、それは新しい修復物の「噛み合わせが高い」ことが原因かもしれません。私たちの噛み合わせは、髪の毛一本(約0.05〜0.1ミリ)が挟まっただけでも感知できるほど、非常に精密なセンサーを持っています。歯科治療では、このミクロン単位の精度で噛み合わせを調整していきますが、治療中の麻酔の影響や、患者さんのその時の体調、噛み方の癖などによって、治療直後には完璧に合っているように感じられても、後からわずかな高さが気になってくることがあるのです。噛み合わせがほんの少しでも高いと、その歯は、食事のたびに他の歯よりも強い力を受け止めることになります。これが、歯と骨の間にあるクッション役の「歯根膜」に、常に過剰な負担をかけることになり、炎症を引き起こします。これが、噛んだ時の痛みの正体です。この状態は、いわば「人為的な咬合性外傷」であり、放置すると様々な問題を引き起こします。まず、持続的な痛みによって、食事をすることが苦痛になります。無意識のうちにその歯を避けて食べるようになり、片側だけで噛む癖がついてしまうと、顎関節への負担が増したり、顔の筋肉のバランスが崩れたりすることもあります。また、常に強い力がかかり続けることで、修復物が欠けたり、外れたりする原因にもなります。さらに、歯根膜の炎症が長引くと、歯の神経が過敏になったり、歯周組織にダメージを与えたりする可能性も否定できません。治療後の噛み合わせの違和感は、「そのうち慣れるだろう」と我慢してしまう方が少なくありません。しかし、この「高さ」は、自然にすり減って馴染むこともありますが、多くの場合、放置しても改善しません。もし、治療から一週間以上経っても噛んだ時の痛みが続くようであれば、遠慮なく治療を受けた歯科医院に連絡し、噛み合わせの再調整をしてもらってください。ほんの少し削って高さを調整するだけで、嘘のように痛みが解消されることがほとんどです。