歯科医院を訪れる患者さんの中には顎が外れたというトラブルを繰り返している方がいらっしゃいます。中には慣れてしまって自分で治すコツを掴んだとおっしゃる方もいますがこれは非常に危険な状態です。頻繁に顎が外れるということは顎関節を支えている靭帯や関節包が極度に緩んでいる証拠であり専門的には習慣性顎関節脱臼と呼ばれます。この状態で自分で治すことを繰り返していると関節を保護するクッションの役割を果たす関節円板が摩耗し最終的には骨同士が直接こすれ合って変形してしまいます。こうなると手術が必要になるケースもあり取り返しのつかない事態を招きます。歯科医としての立場からお伝えしたいのは顎が外れた時に自分で治すことよりも外れないための体作りと環境作りを優先してほしいということです。まず日常の動作として大きく口を開ける時には必ず手を添えるようにしてください。あくびをする際や大きな食べ物を頬張る際は下顎が前方に飛び出しすぎないよう意識的に制限をかけることが重要です。また顎の周りの筋肉である側頭筋や咬筋の緊張を解くマッサージも有効です。多くの患者さんは無意識のうちに食いしばりや歯ぎしりをしておりこれが顎関節への過度な負担となっています。夜間にマウスピース(スプリット)を装着することで関節を適切な位置に保ち筋肉の緊張を和らげる治療は再発防止に非常に効果的です。もし顎が外れた際にどうしても病院へ行くまでの間に自分で行えることがあるとすればそれは患部を冷やすことと安静を保つことです。炎症を抑えるために冷湿布などを当て筋肉の痙攣を鎮めるよう努めてください。自分で無理に押し込もうとする行為は関節を破壊する行為に等しいと心得てください。また再発を繰り返す場合には注入療法や靭帯を縮める手術などの専門的な治療選択肢もあります。顎が外れるという不安から解放されるためには一時しのぎの自己流整復ではなく専門医と共に根本的な原因を解決していく姿勢が不可欠です。一生使い続ける大切な器官だからこそトラブルが起きた時こそ丁寧に扱い正しい医療を受けていただきたいと思います。お口の健康は全身の健康の基盤であることを忘れずに日々を過ごしてください。
頻繁に顎が外れた経験を持つ患者への歯科医のアドバイス