奥の歯がない部分に時々感じる鈍い痛み。「そのうち治るだろう」「歯がないんだから大したことはないはず」と、つい放置してしまってはいませんか。しかし、その痛みは、あなたの口の中、さらには全身の健康が静かに蝕まれていることを知らせる重要な警告サインかもしれません。痛みを放置することは、様々なリスクを自ら招き入れることに他なりません。まず、痛みの原因が隣の歯の虫歯や歯周病だった場合、放置すれば病状は確実に進行します。虫歯は神経に達し、激しい痛みを引き起こすだけでなく、歯の大部分を破壊し、最終的には抜歯に至る可能性があります。歯周病は、歯を支える顎の骨を静かに溶かし続け、隣の歯までグラグラにさせてしまいます。一本の歯を失ったことが、ドミノ倒しのように次々と歯を失う連鎖の始まりになるのです。また、歯がないことで噛み合わせのバランスが崩れ、その結果として痛みが出ている場合、放置すればその歪みはさらに深刻になります。噛み合う相手の歯はますます伸びてきて、隣の歯はさらに傾斜し、顎関節への負担は増大し続けます。これにより、顎関節症が悪化し、慢的な顎の痛みや頭痛、肩こりに悩まされることになるかもしれません。そして、一度大きく崩れてしまった噛み合わせを元に戻すのは、非常に困難で、時間も費用もかかる大掛かりな治療が必要になります。痛みの原因が、抜歯した後の骨の中に残った歯の根や、顎の骨の中にできた膿の袋(嚢胞)だった場合、放置はさらに危険です。感染が顎の骨全体に広がる「顎骨骨髄炎」という深刻な病気に発展するリスクがあります。こうなると、長期の抗生物質の投与や、大掛かりな手術が必要になることもあります。将来的に、歯がない部分をインプラントで補いたいと考えている場合も、放置は大きな障害となります。隣の歯が倒れ込んできたり、対合歯が伸びてきたりすると、インプラントを埋め込むための十分なスペースが失われてしまいます。また、歯周病や感染によって顎の骨が溶けてしまうと、インプラントを支えるための土台そのものがなくなり、骨を増やす手術(骨造成)が必要になるなど、治療が格段に複雑で高額になってしまうのです。痛みは、あなたの体が発するSOSです。それを無視し続けることの代償は、決して小さくありません。
歯がない部分の痛みを放置するとどうなる?