健康な歯茎が薄いピンク色であるのに対し、紫色や赤紫色に見える場合、それは口腔内で何らかの問題が進行している可能性を示す重要なサインです。特に、歯茎が紫色を帯びている状態は、多くの場合「うっ血」が原因と考えられます。うっ血とは、血流が滞り、血液がその場に溜まってしまう状態のことです。歯茎の血行が悪くなると、新鮮な血液が供給されず、酸素の少ない古い血液が溜まってしまいます。この酸素不足の血液は暗い色をしているため、歯茎が赤紫色や暗い紫色に見えるのです。歯茎の血行不良を引き起こす最も大きな原因は、進行した「歯周病」です。歯肉炎が軽度の炎症であるのに対し、歯周病は炎症が歯茎の奥深くまで及び、歯を支える骨にまで達した状態を指します。慢性的な炎症が続くことで歯茎の組織が破壊され、血流は著しく悪化します。その結果、歯茎は弾力を失ってブヨブヨと腫れ、色は赤紫色へと変化していくのです。この状態を放置すれば、歯周ポケットはさらに深くなり、歯がぐらつき、最終的には歯を失うことにもなりかねません。また、喫煙も歯茎を紫色にする大きな要因です。タバコに含まれるニコチンが血管を収縮させ、慢性的な血行不良を引き起こします。これにより、歯茎は健康な色を失い、暗くくすんだ色調になってしまいます。さらに、あまり一般的ではありませんが、心臓や呼吸器系の疾患など、全身の病気が原因で体全体の血中酸素濃度が低下し、その兆候として歯茎が紫色になること(チアノーゼ)もあります。特に、急に歯茎の色が変化し、息苦しさや胸の痛みなどを伴う場合は、すぐに医療機関を受診する必要があります。いずれにせよ、歯茎の紫色は、健康な状態ではないことを示す明らかな警告です。たかが歯茎の色と軽く考えず、歯周病がかなり進行している可能性を疑うべきです。もしご自身の歯茎に紫色の部分を見つけたら、できるだけ早く歯科医院を訪れ、専門家による適切な診断と治療を受けることを強くお勧めします。
歯茎が紫色になるのは危険信号だろうか