歯茎が普段のピンク色とは違い、赤みを帯びていたり、部分的に真っ赤になっていたりする場合、それは歯茎が炎症を起こしている明確なサインです。この状態を「歯肉炎」と呼び、多くの場合は歯周病の初期段階にあたります。歯茎が赤くなる最も一般的な原因は、歯の表面に付着した「歯垢(プラーク)」です。歯垢は単なる食べかすではなく、細菌の塊です。この細菌が、歯と歯茎の境目に溜まることで、毒素を出し始めます。その毒素に対して、私たちの体は防御反応として炎症を起こします。炎症が起きると、患部に血液が集中するため、毛細血管が充血し、歯茎が赤く見えるようになるのです。初期の歯肉炎では、赤みと共に歯茎が少し腫れぼったくなることもあります。歯磨きの際に出血しやすくなるのも、炎症によって歯茎の組織が弱くなっている証拠です。この段階であれば、まだ痛みを感じることは少ないため、つい見過ごしてしまいがちです。しかし、この赤いサインを放置してしまうと、事態はさらに深刻化します。炎症は歯茎の内部へと進行し、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かし始める「歯周病」へと発展していくのです。歯周病が進行すると、歯茎は赤みが増して赤紫色になり、さらに腫れもひどくなります。歯と歯茎の間に「歯周ポケット」と呼ばれる深い溝ができ、そこから膿が出ることもあります。ここまでくると、歯がぐらつき始め、最終的には歯が抜け落ちてしまうことにもなりかねません。幸いなことに、歯肉炎の段階であれば、適切なセルフケアで健康な状態に戻すことが可能です。毎日の丁寧な歯磨きで、原因である歯垢を徹底的に除去することが何よりも重要です。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやフロスを使って、歯と歯の間の汚れもしっかりと取り除きましょう。歯茎の赤みは、あなたの体が発している危険信号です。その声に気づいたら、すぐに行動を起こしてください。
歯茎が赤いのは炎症を起こしているサイン