長男が生後五ヶ月を迎えた頃、それまで夜は比較的よく寝てくれる子だったのに、突然夜中に何度も目を覚ましては、火がついたように泣き叫ぶようになりました。昼間もなんだか機嫌が悪く、抱っこしていないとすぐにぐずり始めます。よだれの量もまるで滝のように増え、スタイは一日に何枚も取り替える始末。最初は原因が分からず、妻と二人で途方に暮れていました。もしかして、これが噂に聞く「歯ぐずり」なのでは。そう思い至った私たちは、藁にもすがる思いでベビー用品店へ向かいました。店の棚には、色とりどりの歯固めがずらりと並んでいます。正直、どれが良いのかさっぱり分かりませんでしたが、店員さんのアドバイスを参考に、カラフルなリング状で、冷蔵庫で冷やせるタイプのシリコン製歯固めを一つ購入しました。その日の夜、また息子がぐずり始めたタイミングで、冷蔵庫で冷やしておいた歯固めをそっと渡してみました。息子は最初、不思議そうな顔でそれを見つめていましたが、おそるおそる口に持っていくと、ひんやりとした感触が気持ちよかったのか、夢中でカミカミし始めました。あれほど激しく泣いていたのが嘘のように、静かになったのです。その姿を見て、私たちは思わず顔を見合わせて安堵のため息をつきました。どうやら、歯が生え始める歯茎のむず痒さが、息子の不快感の正体だったようです。歯固めを噛むことで、そのむず痒さが紛れ、気持ちが落ち着くのでしょう。それからというもの、歯固めは私たち家族にとっての救世主となりました。ぐずり始めたらすぐに渡せるように、家の中の数カ所に置いておくほどです。息子もすっかりお気に入りで、自分で上手に持って、むず痒い場所を探しては一生懸命に噛んでいます。もちろん、歯固めさえあれば全くぐずらないというわけではありませんが、あのどうしようもなかった夜泣きが軽減されたのは事実です。赤ちゃんの不快感の原因を正しく理解し、それに合ったアイテムを与えてあげることが、こんなにも効果があるのだと実感した出来事でした。