胃の痛みを訴えて消化器内科や胃腸科を受診すると、医師は正確な診断を下すために、いくつかの検査を行います。どのような検査が行われるのかを事前に知っておくことで、不安が和らぎ、安心して診察に臨むことができます。胃痛の診察は、まず詳細な「問診」から始まります。いつから、どこが、どのように痛むのか、食事との関係、他に症状はないか、服用中の薬はあるか、といった情報を詳しく聞かれます。この問診が、その後の検査方針を決める上で非常に重要になります。次に、医師が直接お腹を触って診察する「触診」が行われます。痛みの場所や強さ、お腹の硬さ、しこりの有無などを確認します。そして、より詳しく胃の状態を調べるために、以下のような専門的な検査が行われることがあります。最も代表的で、かつ最も多くの情報が得られるのが「上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)」です。先端に小型カメラがついた細いチューブを、口または鼻から挿入し、食道、胃、十二指腸の粘膜を直接、リアルタイムで観察します。これにより、胃炎の程度、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の有無、ポリープやがんなどの病変を、その場で確定診断することができます。検査中に、ピロリ菌の検査や、疑わしい組織を少量採取して詳しく調べる「生検(病理組織検査)」を行うことも可能です。検査には多少の苦痛を伴いますが、鎮静剤を使って、眠っているような状態で楽に検査を受けることもできます。もう一つ、体に負担の少ない検査として「腹部超音波(エコー)検査」があります。これは、超音波を使って、胃だけでなく、肝臓、胆のう、膵臓、腎臓といった、お腹の中の臓器の状態を画像で確認する検査です。胃そのものの粘膜を詳しく見ることはできませんが、胃壁の厚さや、胃の周辺に異常がないか、あるいは胆石や膵炎といった、胃痛の原因となりうる他の臓器の病気を見つけるのに役立ちます。また、必要に応じて「血液検査」も行われます。炎症の程度(白血球数、CRP)、貧血の有無(胃からの出血を疑う場合)、肝臓や膵臓の機能(アミラーゼなど)を調べることで、全身の状態を評価し、診断の補助とします。これらの検査を組み合わせることで、医師はあなたの胃痛の根本原因を正確に突き止め、最適な治療法を選択することができるのです。